今回は熊本大学の荒木先生が特別講演の講師でした。勉強になる話ばかりだったのですが、ヒートショックプロテインの話がとても面白かったので紹介したいと思います。
糖尿病には、血糖を下げるインスリンの分泌が低下する1型糖尿病と、インスリンは十分に出ているにもかかわらず血糖値が下がらない2型糖尿病があります。インスリンの効きが悪くなる状態をインスリン抵抗性と呼びます。インスリン抵抗性には色々と原因があるのですが、細胞レベルでヒートショックプロテイン72の量が下がるとインスリンが働きにくくなるそうです。熊本大学の内分泌・代謝内科では、ヒートショックプロテイン72の量を増やす治療を開発中とのことでした。
そこで、これまでヒートショックプロテイン72を増やす方法がわかっていないかどうか調べてみると、運動がヒートショックプロテイン72を増やすようです。運動が糖尿病に良いのには科学的根拠があったのですね。
一般的にヒートショックプロテインは熱により誘導されるのですが、何とお風呂に入ると糖尿がよくなるという論文が1999年に報告されていました(Hooper, New Engl J Med)。8名の糖尿病患者さんに週に6日間、37.8から41.0度のお風呂に肩まで30分間つかってもらい3週間後に血糖値を調べたところ、治療前は平均182 mg/dLあった空腹時血糖が159 mg/dLまで改善したそうです。中には体重が減り、インスリンを減らすことができた人もいたそうです。
なかなか運動を続けるのが難しい患者さんもいますよね。入浴療法、温泉地の大分県にはぴったりの治療法ではないでしょうか。でも、のぼせないように注意してくださいね。
少しずつでもブログを再開していこうかと思えるほど、目からウロコが落ちる話を聞いてきましたので久々に情報発信したいと思います。
皆様、認知症をご存知でしょうか。認知症とは、一度できるようになったことが脳の機能が障害されてできなくなり、日常生活に支障をきたすようになった状態です。日本では、2012年の時点で65歳以上の方の7人に1人が認知症だと報告されています。最近、不眠症と認知症の関係について、大分大学の石井先生の講演を聞いてきました。
要約すると、
1. 不眠症があると認知症になりやすい。
2. 認知症になると不眠症になりやすい。
認知症と不眠症は互いに悪影響を与える関係にあるそうです。そのメカニズムが2013年にScienceという科学誌に報告されています。脳内にアミロイドβタンパク質が蓄積することが、アルツハイマー型認知症の原因の一つであると考えられています。脳の老廃物は色々な方法で取り除かれるのですが、アミロイドβは睡眠中には覚醒時の約2倍の速さで脳内から除去されるそうです。すなわち、不眠になると脳内にアミロイドβが蓄積し認知症のリスクが高まるというのです。睡眠には、脳から老廃物を除去し脳の機能を健康に保つはたらきがあることが明らかになりました。
日本医師会からの報告によると、日本では不眠症で病院を受診される方が他国と比べて少ないそうです。そういう方は、お酒の力を借りて眠りについているようです。確かに、お酒には寝つきをよくする作用があるのですが、深い睡眠を妨げます。お酒を飲んだ後、何度もトイレで目が醒めるという経験はありませんか?
飲酒も認知症のリスク因子です。
不眠症でお悩みの方は、是非ご相談ください。