With コロナ時代の考察

 皆様、御無沙汰しておりました。8月に内科学会と感染症学会で新型コロナウイルスに関するシンポジウムが開催されました。演者の先生は尾見先生、脇田先生や館田先生など感染症対策分科会などでご活躍の方々で、とても勉強になりました。例年は東京に出張するのですが、今年は新型コロナウイルス拡大の影響のためオンラインで視聴しました。皆様が普段、心配されていることや知りたいことなどを中心に、これまで分かってきたことをお伝えしていきいと思います。
 新型コロナウイルスはいつまで続くのでしょうか?答えは誰も知りません。今年の2月から3月頃は、全国で新型コロナウイルスの封じ込めに努めましたが、残念ながら全国に感染が拡大している状況です。当分の間、我々はこのウイルスと向き合っていかなければいけないようです。
 ワクチンはできるのでしょうか。今、世界中で多くの研究機関や企業が新型コロナウイルスに対するワクチンを開発中です。一方、これらのワクチンがコロナウイルス感染症を予防できるかどうは未知数です。過去にもSARSやMERSに対するワクチンが開発されましたが、残念ながら期待する効果は得られなかったようです。逆にワクチンを接種することで病状が悪化するケースも出ました(ADE; Antibody-dependent enhancement)。一般にインフルエンザなどの呼吸器感染症は気道でウイルスが増殖するため、血液中にある免疫細胞はこれらのウイルスを十分に排除できません。インフルエンザワクチンには症状を軽減する効果はありますが、ワクチンを接種した方でもインフルエンザにかかってしまうことがあります。また、現在開発中のワクチンはアデノウイルスやRNAを用いたワクチンで、わが国はこれらの剤型の使用経験がなく安全性も未知数です。現時点でワクチンに過度な期待はできません。
 それでは、どうのように私たちは新型コロナウイルスから身を守っていけばよいのでしょうか。新型コロナウイルスの患者さん全員に感染性があるわけではなく、一部の患者さんが密閉、密接、密集といった3密の状況で、マスクをせずに大声を出すことが感染の原因になっているようです。これら3密プラス大声の状況を避けることが大切です。また、マスクなどの感染対策をしてお買い物に出かけても感染の心配はないようです。
 尾見先生の講演で印象深かったのは、“クラスターが見つかる=不安“ではなく、”クラスターを制御する=安心“という思考が大切だとのお話です。コロナウイルスのクラスターも小さな段階で発見し対処すれば被害が小さく、知らないうちに広がっていた、という状況が最も危険です。
 今後も新型コロナウイルスについて、わかってきたことを書いていこうと思います。

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